ある女優

ふとcinema scapeを眺めていたときのこと。新規登録作品一覧にて「あんにょん由美香」なる作品を発見しました。「この由美香って林由美香のことかな…?」と思いクリックしてみると、やっぱり林由美香にまつわるドキュメンタリー作品でした。今年7月にポレポレ東中野に公開されて、順次地方公開中みたいじゃないですが…。

女優としての林由美香の存在を知ったのは、恥ずかしながら、彼女がこの世を去った2005年以降のことです。名前はなんとなく聞いたことがあるという程度でした。いつだったか「すごい映画がある」と聞いて、『たまもの』を見たのがその頃だったと思います。林由美香の作品を観たのも初めてでした。

『たまもの』はピンク映画です(原題=成人映画館公開タイトルはここでは自重)。林由美香はもともとAV女優としてデビューした人です。私は世代が違いますが、特定の年代には知名度があると思います。彼女はこの世を去るまで現役でしたが、ピンク映画にも10年以上長きに渡って出演を続けました。

予備知識無しでこの『たまもの』を観たとき、全身に衝撃が走りました。こんな体験ができる邦画には滅多にお目に掛かれません。本当に。ボウリング場で働く女性の盲目的な愛が綴られたドラマなのですが、「こんな傑作がピンク映画にもあるのか!!」と驚愕したのが本音です。

この作品がきっかけで、監督を務めたいまおかしんじのファンにもなり、一般向けにDVDリリースがされているピンク映画を観るようにもなりました。こういった作品は主に、年に1度開催される「ピンク大賞」(簡単に言えばピンク映画界のアカデミー賞みたいなもん)で高評価を得たタイトルばかりなので比較的よくできた・練られた作品が多いのも事実です。非難するわけではないですが、高予算で製作されたそこらへんのエンタメ大作なんかよりも、よっぽど見応えのある作品が揃っています。

林由美香の話に戻ります。彼女の魅力はなんといっても、その自然体の演技力。脇役で出演しながらも、その圧倒的な雰囲気で作品を魅了させる「何か」を備え付けています。これはもう、観れば絶対にわかります。シリアスな演技も、コメディな演技も、彼女の良さが十二分に堪能できます。

その『あんにょん由美香』ですが、監督は『セキ★ララ』の松江哲明とのこと。『セキ★ララ』は在日朝鮮人を特異な視点から描き、且つなかなかHARDな描写が冴えた佳作でした。鑑賞しないことには始まりませんが、ドキュメンタリーながら、林由美香が去って4年が経ちながら、彼女はバリバリ主演らしいです(その辺は監督の手腕なんだろう)。

早い話、「完全に見逃した!!!!」わけです。よくピンク映画が一般向けに改題されて公開されるポレポレ東中野なんですが、HPはちょくちょくチェックしていただけに悔しいです。11月にTAMA CINEMA フォーラムで1日のみ、また神奈川でも上映予定があるらしいので絶対に観に行きます。絶対に。今後の地方上映は札幌、仙台、静岡、名古屋、神戸、広島、佐賀、沖縄……って、殆ど全国ですねぇ。

いつになるかわかりませんが、『あんにょん由美香』を観たら、またいろいろ書きます。


リンクを貼りまくっておきます。なんとなく。

林由美香Wikipedia
『たまもの』(アルゴピクチャーズ)※予告編観れます
あんにょん由美香』(公式HP
あんにょん由美香』(公式blog
あんにょん由美香』予告編(YouTube

いまおかしんじWikipedia
いまおかしんじ公式BLOG「まーイーカー」
『かえるのうた』いまおかしんじ監督作品(アルゴピクチャーズ